さよなら、チック・コリア
2021.5.21
皆さんこんにちは
東京の緊急事態宣言はやはり延長となりましたね
昨年末、私のサックストリオのピアニストが年明けの月例ライブで演奏したい曲として、チック・コリアの「バド・パウエル」のリクエスト。
(こんな難曲、2週間もないのに出来るわけないでしょ、テーマ吹けたら終わりだわ)と、ぶつくさ言いながら練習を始めたら、時短要請で演奏時間も削られるためやむなくライブは中止に
仕方ないけどちょうど良い機会だからじっくり腰を据えて練習するか、とCDに合わせて練習していた最中、チック・コリアの訃報が届きました。
享年79才。
中学の頃からラジオ番組でジャズを聴き始めて、中でも強い印象を受けたのがチック・コリアでした。
ラテン的な明るさと強力なアクセント、どこかロマンチックな香りのするピアノ。
高校生になり、念願のチック・コリアのコンサートへ。
田園コロシアムでの屋外ライブで、かなり大人数のバンド編成によるオープニングの後(この頃はフュージョン)、ステージに1人残ったコリアさん。
折しも天気が不安定で、雨が残る中、スピーカーがかなりのハウリングを起こしました。
キーボードでソロ演奏を始めようとしていた彼は、雨の様子を見る様に腕を前に突き出し、MC用のマイクに向かって「ボーーーーーーッ!!」とハウリングに対抗、客席は爆笑
一気にほぐれて、コリアさんのご機嫌なエレピソロに大きな手拍子で応えたのでした。
バイブラフォン奏者ゲイリー・バートンとのデュオのコンサートにも行きました。
コンサートホール一杯にピアノとバイブラフォンが溶け合い、弾けては消えていく。世の中にこんなに美しい響きがあるのか、と天井に揺らめくバイブラフォンの反射光を見上げながら陶然としていました。
アンコールでも演奏が白熱、ピアノのスピードにのったフレーズの最中に突然異様な音がして、ピアノ線が先端に付いた部品もろとも跳ね上がるのが見えました。弦が切れたか、内部のどこかが壊れたのです
皆が息を呑みましたが、コリアさんは余裕の笑みを浮かべて、わざとその音の出なくなったキーを「ココン、コン、コココン、コーン、…」と連打。
客席からは笑いがもれたり、拍手も起きました。
そのまま何事もなかった様にデュオ演奏は続いて、無事?エンディングとなりました。
コンサート終了後、数人のスタッフがぐるっとピアノを囲んで何か話し合っていました。
故障がアンコール演奏中だったのが不幸中の幸いでしたが、もしコンサートの始めとか前半から起きていたら、大問題ですよね
でもライブが命のジャズでは、こうしたトラブルやハプニングが付き物です。百戦錬磨のコリアさんにとってはこの程度は日常茶飯事で、ステージ袖で慌てふためいている裏方さんに「大丈夫、僕は気にしないから。音が出ないなら別のやり方で何とかするから」と鷹揚さと思いやりのサインを送っていた様な気がします。
聴衆に対しては素早く別のパフォーマンスに切り換える、余裕とユーモア。
6月にライブが出来るかどうかも見通せず、「バド・パウエル」の練習は断続的に続いています。でも参考のCDもライブ盤なので、あのホールでの素晴らしい響きを追体験しながらの、何ともぜいたくな練習です
あなたは星になってしまったけれど、まだまだ勉強させてもらいますよ、コリアさん。
ジャスミンティー